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柄の補修

ほうきの柄に虫食い穴が開いたら、はたして修理はできるのだろうか?

先日、うちのほうきの柄から、タケトラカミキリが羽化してきました。
専門の竹屋さんから買って、切り出しの際は虫食いの跡がないか確認して、さらに制作前には再度油抜き(加熱)もしている竹の柄から生きて出てきたなんて、なんて幸運なカミキリでしょう。

と呑気なことは言ってられません。
ちゃんと確認対策していても、化学塗料のようなものを使っていない竹ですから、
後から虫がついてしまう、なんてこともあるのでしょう。

でも、殺虫剤やニスのような塗料は使いたくない。

というわけで、万が一柄に虫食い穴が開いたら修理できるのか、検証してみました。


こちらがタケトラカミキリ君の出現場所です。

まずは薄皮一枚になっているところを剥がします。

竹の穴は竹で塞ぐのが一番!ということで、
竹粉と米糊を混ぜてパテを作ります。

米糊は乾くと痩せるので、数回に分けてモールドしていきます。

乾いたらナイフで削ってヤスリがけして、
竹の形にぴったりになるようにします。

和紙を貼って、漆を塗って仕上げました。

遠目ではそういう模様かな?と思えるくらいにはなります。

(漆かぶれが心配なので、一般の方へ供する場合は、柿渋で仕上げることになるかと思います。)


消耗品であるほうきをここまでして補修する必要があるのかと言われると、
大して必要ないのかもしれません。

でも、古来日本では道具を100年大事に使うと付喪神が宿るという話です。

もし思い入れのあるほうきの柄に穴が開いてしまった、
というようなことがございましたら、お気軽にご相談いただければと思います。

やりたいことがやっとわかった

自分のやりたいことって、わかっていてもわからないものです。
なんとなくもや~っと頭や心の中に漂っているのですが、言葉にできるくらい理解することはとても難しい。
それは雲を掴むよう。

過去に歩んだ道や今現状を取り巻く環境、問題意識、等々、いろんなものが絡み合っているから、それを掴むには、ひとつひとつを丁寧に解きほぐしながら理解していくことが必要になります。
そしてやりたいことをシンプルな言葉にできたときこそ、「わかった!」となるのではないでしょうか。

言葉にできたら、「なんだこんなことだったのか」と思います。
それはそう。前から知っていたことなのですから。ただ言葉にできるほどはわかっていなかったというだけで。


私が手仕事においてやりたいこと。それは、

「伝承工芸」

でした。

伝承工芸とは
・民話的なものづくり
・個人から個人へ、世代から世代へバトンタッチされる
・政治的な枠組み(血縁、地域、会社 等)に囚われない
・時代、風土、環境に合わせて柔軟に変化するものである
・変化しながらも残るものこそ、そのものの本質である
・伝達の間で伝えきられなかった部分は、伝承者がその鍛錬を以って補うことができる
・大学のように閉じられていて開かれている
・学問的姿勢を大切にする
・その時代に生きる人々、また次の世代に生きる人々が、背筋を伸ばした幸福を享受することを願う
・ものがすべてを語るくらい、含みを持ったしなやかなものを作る

ひとまず言葉にできたのはここまで。


工芸やクラフト、手仕事についてあれこれもやもやしていたものが晴れた。

わかったからといって実現できたというわけではありません。
何かが変わったというわけでもありません。
作品も、変わっていません。

それは、北極星のような道しるべを、彼方に見つけたに等しいです。

さあ今から、「伝承工芸」に向かって、進んでいきます。